一人百首:2
1月が半分終わった。強風は体感温度を奪い、外へ行く気力を減らし、私は家具の一部となっている。
ここ数年ほどずっと、お正月に石川啄木の「なんとなく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風無し」という短歌を思い出していた。
そこからはまって青空文庫などで石川啄木の歌集などを読んでいたが、石川啄木が(なんとなくいいことありそうだな~)と思ったのはこのとき以外にも多い。ネガティブなのかポジティブなのか分からないやつである。
ほかにお気に入りの歌では「旅を思う夫の心!叱り、泣く、妻子の心!朝の食卓!」というものがある。
激しすぎだ。
朝の食卓!って。(ほかにも「かなしき寝覚!」とか「ゆるめる心!」とかびっくりマーク使いすぎである)
枡野浩一さんの「石川くん」などにもあるように、実際の石川啄木はイメージと違い、借金もちで女好きなど短所の多い人物だったようである。
僕はそれを(こいつやる気のないやつだなぁ)とか思いながら読んでいるわけである。偉大な歌人に対して失礼な話ではあるが。
自分のもろさや弱さを作品にする、というのも中々難しいことだ。まず自分自身に嘘をついてはいけない。客観的になれない人にはできないことだ。さらにそれに適した言葉を見つけなければならない。
そうしてできた作品は正論や効率がすみずみまでいきとどいた世の中にうんざりした人に「こいつもうんざりしてるんだなぁ」と励みを与えることができる。
そんなうんざりした男が「なんとなく」いいことがあるかもしれないからこそのいい句である。年がら年中あっけらかんとしているやつがこれを書いてもぜんぜんよくない。
ちなみにそんな私の初夢はスパイダーマンになって不良をやっつけるというものであった。普段は歯が抜ける夢とか自分のミスを必死に隠すという夢が多いのに。
これはなんとなくいいことが起こりそうである。
キスをする 初夢を見て お互いが 変わらずいると 勝手に思う