utsurobune’s diary

短歌を発表してます。

一人百首:7

田舎暮らしだったせいか、趣味がインドアだからか、大学進学をした後は町をぶらぶら歩くのが好きになった。もともと「モヤモヤさまぁ~ず2」みたいな普通の町をただ歩くロケ番組も好きだったというのも一因だろう。

考えごとをするときもわざわざ外にでる。たいした用事がなくてもわざと外を歩く。朝ごはんも昼ごはんも晩ごはんも外で食べたほうがおいしい。そのうちホームレスになるんじゃないかと思う。

生活環境が変わってあまり行かなくなったところ、前のバイト先とかに行く。毎日のように通ったところで、今年になってからでた曲を聴いたみる。タイムスリップしたようななんとも奇妙な気分になる。

とにかくよく歩く。大概スニーカーとデニムだ。スニーカーはコンバースよりニューバランスのほうがやわらかい感じがして好きだ。おかげでスニーカーの減りが早い。ボロボロのスニーカーを捨てるときは愛馬と別れる騎手のような気分になる。競馬1回もしたことないが。

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僕の住む県だと特に町の特色が様々だ。都会もあれば住宅地に適した場所もあり、ド田舎もあれば港町もある。実際に住んで足を運ばないとなかなか良さは伝わりにくい。

今回は一番大きな町に出かけてみた。一週間いつでも人が多い場所だ。ビル街も多いこの町は平日の朝よりは休日のほうが人数は少ないほうなので、自分のペースでのんびり歩ける。最も人通りの多い駅前や商店街の前ではストリートシンガーや宗教の勧誘、新商品の案内など町に立つ人でごったがえしている。

その横を傍目で見ながら歩いていく。自分自身、部活動などでチラシを配った経験があるから無視される辛さは分かるが、それとは話が別だ。黙々と歩く。

するとその中に路上詩人がいた。中々珍しいタイプだが、何番煎じだと思って眺めているとその書の中の一つに、

「そのおっぱいがすきだ」

と書かれたものがあった。

そんなこと僕だって村上龍の横に座る小池栄子を見るたび思うわ!書にわざわざすんな!ていうか飾る場所ないだろ!と考えながら歩き続ける。

だが、こうも思った。ものすごく深い文章なのではないかと。彼は「巨乳がすきだ」とは書いてないのだ。おそらくその詩人の彼女はあまり大きい胸ではないのだろう。そしてそのことを気にやんでいるのかもしれない。だが彼はそんな世間の評判なんて関係ないんだ!ぼくは君の胸が好きなんだ!と思い、そのことを書にしたためたのかもしれない。9文字の中に深い愛情が感じられる。

胸に限定すんなよ。

用事を終え、昼ごはんを食べた。後は自分の時間だ。

目的としていた道を歩いていると間違えた道に入ってしまう。ありの巣のように交差した道が続いている中を歩いていると、中古レコード店を見つけた。

レコード収集家の真似をしてバラララ・・・とめくってみる。

外へ出るとアジアの言葉でスタッフ募集のチラシが書かれたカレー屋、プロレスグッズ専門店、昔使われていたであろうやたらと細長い店の入り口、24時間営業の居酒屋などなどなんとも異様な店舗のたたずまいが乱立していた。脇にそれただけで外とは別の空間がそこに存在する。旅行エッセイや映画で見たインドのたたずまいにどこかしら似ていた。

よく社会人の先輩たちが「学生のうちに旅をしておいたほうがいい。行けなくなるから」と言っていたが、よく観察してみると歩いていた町が別の空間にかわるきっかけがある。町は無差別に情報を住民に与える。ブログを捨てよ、町へでよう。

夜起きて いたずらに回す テレビ寂し あたりの物音 覚醒せし我