utsurobune’s diary

短歌を発表してます。

青行燈:4

みなさんこんばんは。怪談士のうつろぶねです。今週も始まりました。青行燈。

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このコーナーでは知人から聞いた怖い話をご紹介いたします。

これはとある怪談系の動画で昔紹介されたもの。タイトルが「デパートの服屋」というものだそうです。文字起こしします。

 

怪談の舞台としてよく挙がるのが、ホテルの一室だとかトンネルの中とか、基本的には暗くてあたりに人がいないような場所です。やはり人が普段生活していると、明るい場所や人が大勢いる場所では恐怖感というものは芽生えないのでしょう。しかし、明るい場所で人がいたとしても、落とし穴のように闇の中へと引きずり込まれるということもあるようです。

ある新婚の夫婦が結婚を機に家を借りたらしい。郊外で小さいながら一軒家で、小奇麗なつくりだから気に入っていたそうです。

新生活が始まるわけで、引越しだとかで忙しく、有給を使ってそれをすまして一週間ぐらいがたったころの話。

旦那さんのほうが会社に来ていくワイシャツがボロくなってくるので買い換えようという話になりました。そこで二人は近所のデパートへ行ってみることにしたそうです。どこにでもあるような大型チェーンのその店に二人が始めて行ってみると、なかなか快適な場所になっていて普通のスーパーのほかに家具や雑貨やペットショップなんて店も入っていたそうです。それまでマンション暮らしをしていた二人は新しく犬でも飼おうかと歩きまわったそうです。

でも用件はワイシャツを買うことだからこんなことしてられないと男性の洋服店へと向かったそうです。そこでいろいろ探していると、奥さんが暇そうにしているので旦那が下にある婦人服を見てくれば?と提案したそうです。行ってみるといって奥さんは下の階へと行ってしまいました。

旦那は店員と話しているとオーダーメイドもできるというので、来週また来るといって支払いをすまし、奥さんの下へと行きました。

奥さんはこれからの季節ようにデニムを見ていたところだったそうです。奥さんが気に入ったものが見つかったようで、試着してくるといいました。本来自分が買うはずのワイシャツを買わないで奥さんの服を買うのかと内心思ったものの、試着室へと旦那さんも向かったそうです。

カーテン越しに旦那さんが着た感じどう?と尋ねました。すると奥さんはうーん、ちょっと大きいかな。と返事をしました。そうなのかと思ってさっきの場所に戻り、ワンサイズ下のデニムを取って戻ってきました。カーテン越しにデニムを渡し、今度はどう?と尋ねると、またうーん、ちょっと大きいかな。と言うそうです。これも?と聞くとうーん、ちょっと大きいかな。というそうです。じゃあ他の服にしてみたら?と言うとそれにもうーん、ちょっと大きいかなと返事するというのです。

おかしいと思い、えぇ?と言うとそれにもうーん、ちょっと大きいかな。と答えたそうです。ふざけていると思い、何いってんだよ、馬鹿なことするなよと言うと笑いもせず、さっきと同じ調子でうーん、ちょっと大きいかな。と言うそうです。

さすがに旦那さんもぞっとしました。周りにはカーテンが空いたままの試着室が見えます。カーテン越しの自分の妻が別人になっているような気分がしてきて、ちょっと開けてもいいか?と尋ねます。

すると、うーん、ちょっと大きいかな。と答えるのです。

我慢できなくなった旦那さんはカーテンを開けたそうです。すると中には普段と変わらない奥さんがいて、どうしたの?びっくりした。と微笑んだそうです。いや、ちょっと変だと思ったから・・。と言います。何が変なの?と尋ねられ、いや、なんでもない。と答えた旦那さんはさっきのデニムを履いたままの奥さんを眺めます。どこも変なところがなかったことに気づき、安心してごめんごめん、なんでもないよといってカーテンを再び閉めました。椅子に座って落ち着いていると、さっきの見た奥さんのどこかに違和感を感じ始めました。

なにかいつも見ている奥さんと雰囲気が違ったような。でも普段どおりの会話をしていたし、いつもと同じ顔だったし、何もおかしい所はなかったと思って振り返っているとあ、と気づきました。

婚約指輪が右手の薬指にはめられていたのです。

試着室のカーテンはまだ閉じられたまま、「それ」はまだそこにいるはずです。

 

来週も怪談をご紹介いたします。それではごきげんよう